多弁、戯言、独り言

その時思ったことのアーカイブ

割物語

人間関係の話をしよう。

かつて男子小学生だった私が何気なく考えた、『友達』『友人』『親友』という言葉における親密度の差はどこに生じるのか、という純粋無垢ゆえの疑問は未だに解釈し切れていない。単純明快明朗会計だった無邪気な少年がふと抱いた永遠のテーマによって自身の考え方とその行きつく先を大きく左右されるなんて一つとして想像していなかった。

 

中学へ入学した私はインターネットを駆使しSNSニコニコ動画に入り浸る、所謂『ヲタク』となりしょうもない人間に急降下で成り上がっていた。

そんな自分が熱烈に感銘を打たれた作品がある。今回はその作品のセリフを引用しつつ戯事をこぼしていく。

 

「友達を作ると、人間強度が下がるから」

 

西尾維新著作「物語シリーズ」の主人公、阿良々木暦はそう言っていた。

そう言った彼や作者である西尾維新の粋な言葉遊びや言い回しに魅了され斜に構えた厨二病を拗らせ続けてしまった私だが、案外この言葉は自分を救っている。

何でもかんでも空気を読んで流れに任せて周りに合わせて、と言うのは別に苦手なわけではないけれど没個性になる危機感からその風潮が元から好きじゃない。そうした自己を貫いた結果、自身の環境だと周りから少し浮いた人間にはなったのだが…それはそれで案外快適なものだ。

その言葉を胸に絶賛厨二病だった中学時代の私は我が道を往く暴君と化し、何事もうまくいく中心人物、台風の目の如く存在になっていた。

 

しかし盛者必衰、高校へ入学と同時に覇道の歯車は噛み合わなくなりカーストの最下層どころか外の人間となった。(無論、自分そのままで中心になれる環境は部活動にあったのだが)

大それた事を言いつつも、ただの1人のちっぽけな人間。孤独や疎外感を感じ絶望のような感情を抱えることになったが、厨二病を拗らせた私には阿良々木暦のその言葉が自身を保つ柱にもなっていた。

そんな中また一つ、私を支えた言葉がある。

 

「……ひとつ言えることは、友達なんざいなくても人は生きていける、ってことかね」

「友達ってのは酸素でもなけりゃ水でもない。どちらかというと嗜好品の分類だよ。あればあったで充実するだろうし、なけりゃないでどうにでもなる。コーヒーやタバコと大差ないもんだよ、他人の存在なんてのは。」

「つまりだ、今いる友達も、敵になるかもしれない周囲の人間も、恐れなくていいってことさ」

 

お婆ちゃんは不敵な笑みを浮かべながらそう言っている。

長々と引用したがこれは入間人間著作「電波女と青春男」における駄菓子屋を経営する老婆、田村さんのセリフだ。

これが私をさらに拗らせ捻れ歪ませていく。

中学時代にこのセリフを見て目から鱗というか、これほどまでに人間関係や友人関係について上手く言い表したものがあっただろうかと感銘を打たれた記憶がある。

確かにカーストの外にいようがそんなことはお構いなしに学校という監獄は機能しクラスという檻は円滑に回っていた。だったら自分の傷つかない範疇で鑑賞すればいい、求心力のある人間がカースト上位にいるなら外側から干渉しようと。黒歴史まっしぐらな恥ずかしくなる酷い思考だが当時はこれを真剣に考えていた。

不変の人間関係なんて無いし他人同士、100%理解し合い分かち合い共鳴し合う事なんて殆どないのだからそんな嗜好品に縛られる必要はないのだ。壊れて修復不能になる人間関係だってある。いつ割れるかもわからないものに執着して依存するなんて危ない事は出来ればしたくない。

 

そうした思考で3年間生活を送ることで見事に「変人」「変わり者」という不動の立ち位置を確立させ、それはそのまま大学生活でも発揮している。

 

だからこそ、学生を終え社会人という余生を故郷を離れて行いたいとも思ったし、実際そこそこ上手くやっている。元々友人の母数が少なかったので当然友人はほとんどいないがそれがいわば普通になっている。

友達100人なんて出来なくていいし要らなくて、数少ない腹を割って話せる竹馬の友が数名いれば人生は円滑に回る。

 

蜜を凝縮した外に皮膜のように希薄な人間関係があれば大層、人望の厚い人に見える。見栄を張り合う必要はなくて、私には私という唯一無二の理解者がいるだけで事足りるのだ。

 

けれどもそんな人間関係のパズルに1ピース足りないとすればそれは気の置けないかけがえのない異性の存在という側面もあるがそれはゆくゆく探せばいいし、それが全て揃っていてはつまらない。模範的なゴールも規則的な正解もない方が数学が苦手な自分には存外あっている。

この考えがいつか変わるかもしれないし変わらないかもしれない。解釈はできても依然、自分の中で解決はしていないし、それこそ死ぬ最後まで終わりのない題目だ。

 

故にこれが私の物語、割物語。我物語なのだ。

 

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